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大雪山の裾野に広がる美瑛は、「丘のまち」としても知られている。
丘は夏には緑の畑地が広がり、冬は一面の銀世界へと姿を変える。
そんな丘の麓に「ナブの家」はある。
国道から脇道へ入り、有名な「ケンとメリーの木」を右手に見てさらに進む。
道路からは100メートルも奥に入り込んでいて、走っている車から見たら普通の農家の家屋だと思って通り過ぎてしまう。
「ナブ」は、リチャード・フォードの「銀の森の少年」の主人公の名前だ。
動物と共に森で暮らす少年の心をもった職人が住む家。それが「ナブの家」である。

「ナブの家」の主の作風は変わっている。
機械で切断され、きれいに整えられたテーブルや額縁。主はこれをナタで削っていく。
ある意味では破壊と言ってもいいかもしれない。
主のナタを使って削ると言う大胆な手法で、いかにも人工物との印象をぬぐえなかった整形された家具や額縁は、みるみるうちに姿を変えてゆく。
こうしてアンバランスと荒々しさを加えられて出来上がった作品には、人の手で作られたものでありながら自然の力強さが感じられる。
主がひとたびナタを入れれば、人工物に自然の力強さが宿った、唯一無二の作品が生まれるのだ。

2005年、富良野を舞台にしたドラマがTVで放映された。ご覧になった方も多いと思う。
このドラマの舞台となったのは、森に囲まれた静かな喫茶店。
そして、この喫茶店の白い壁を飾っていた額縁達が主の作品である。
このドラマの脚本家の目に偶然止まった主のナタ割フレームは、奇しくも全国ネットでTVデビューすることになった。
作った本人は知人からの連絡で初めてそのことを知り、たいそう驚いたらしい。
後日、主とこの脚本家は顔を合わせる機会に恵まれる。ナタ割フレームは、主とこの脚本家との出会いをもたらしたのだった。

今、「ナブの家」には、鳥の住んでいないバードハウスがたくさんある。
バードハウスは、アメリカではインテリア小物としてすでに地位を確立していて、バードハウスメーカーまであるそうだ。
日本では、インテリアとしてのバードハウスはほとんど普及していない。
主は今、このバードハウスを広めようと、いろんな形のものを作っている。
バードハウス=巣箱、と考えがちだが(管理人も単純にそう思っていた)、専門家に言わせるとどうも違うらしい。
が、傍目にはどちらも同じように見える。
実際、組み立て終わって作業小屋の外に掛けられているバードハウスには、野鳥が巣材を運び込み営巣しているものもある。
野鳥にとっては、巣箱もバードハウスも営巣地として快適な場所であることに変わりはないようだ。
同義のようで同義でない「バードハウス」と巣箱の関係、素人には難しい。「バードハウスについて」をご覧頂くと、少し違いがわかるかもしれない。
さて、その巣箱、否、バードハウスには、すでに某所から「販売したい」と言う申し出がきているようで、滑り出しは好調のようである。
「ナブの家」-これからも何かおもしろいことをしてくれそうな予感を感じさせる、そんな工房-。
ナブの家・主 山口 裕(やまぐち ゆたか)
美瑛の丘に広がる畑の真中にある「ナブの家」に移り住んで10年。
恵まれた自然と野鳥、野生動物に囲まれ、日々作品製作に没頭する。
同居家族は妻と愛犬サム、そして猫2匹。
文: 管理人O